※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

月間1000万人の利用者、8億回以上のPV数を誇る地元情報サイト「ジモティー」の運営を手がける株式会社ジモティー。同社は、無料で誰でも地域情報を掲載できるサイトから、自治体と連携したリユースのリアル店舗「ジモティースポット」の展開へと事業を拡大し、地域社会への貢献を深めている。ネットとリアルの相乗効果で地域社会のインフラを目指す同社の代表取締役社長、加藤貴博氏に話を聞いた。

リクルート時代の経験から見えた情報格差という課題

ーー貴社を設立した経緯をお聞かせください。

加藤貴博:
私は早稲田大学を卒業した後、2001年に営業職として株式会社リクルートへ入社しました。リクルートは「営業が強い会社」というイメージがあり、自分自身を成長させるためにあえて苦手な営業職を希望したのです。配属された教育情報誌の営業では、思うように結果を出せませんでしたが、お客様のために何ができるかを考えることに充実感を覚えていましたね。

あるとき、浅草にある小さな裁縫教室を訪問した際に、「この教室のことをどうやって世の中に伝えれば良いのか」と悩みました。メディアに掲載したくても、当時の掲載料は小規模な事業者にとって負担が大きいものでした。しかし、この教室の情報を必要としている人はきっといるはずだと感じたのです。

その後、社内でネットマーケティングや商品企画の仕事を経験するなかで、「目立たないけれど、良いものにきちんとフォーカスが当たるようなメディア」や「頑張っている人が助かるようなサービス」をつくりたいという思いが強くなっていきました。

そのタイミングでジモティーの立ち上げに誘っていただき、「無料で情報を掲載できる」というコンセプトにこだわり、地元の情報を無料で発信できるプラットフォームをつくるために社長として参画しました。

インターネットを使わない層にもリーチする店舗戦略

ーー貴社の事業内容について教えてください。

加藤貴博:
弊社は、「ジモティー」という地域情報に特化した情報サイトを運営しています。最大の特徴は「無料で、誰でもいつでも情報を掲載できる」という点です。従来の広告媒体では費用面で掲載が難しかった情報も、「ジモティー」であれば気軽に発信することができます。

具体的な利用例としては、不用品のやり取りが広く知られていますが、それ以外にも多様な使われ方があります。たとえば、地域限定の求人情報、賃貸物件の情報、一時的な手伝いの募集など、地域に根差した情報が数多く掲載されているのです。また近年はリアル店舗の「ジモティースポット」も展開し始め、ネットとリアルの両面から地域情報のインフラ構築を目指しています。

ーー「ジモティースポット」とはどのようなものですか?

加藤貴博:
2021年ごろから「ジモティースポット」という店舗の展開を始めました。これは自治体と連携したリユースの事業で、使わなくなったものを店舗に持ち込んでいただき、必要な方に提供するという仕組みです。一般的にはリアルの店舗がネット展開するというケースが多いなか、弊社はネットからリアルの店舗展開という反対の戦略を選びました。この戦略には、ネットをあまり使わない方にもサービスを届けたいという思いが込められています。

他のリサイクルショップとの違いは、「買取」ではなく「譲渡」という点と、自治体と協定を結び市民への啓発活動を一緒に行っている点です。「ジモティースポット」に持ち込まれた商品は「ジモティー」にも掲載されるため、ネットサービスの利用者も同時に増加するという相乗効果が生まれています。

FC展開で加速する地域密着型サービスの未来像

ーー企業文化や大切にされている考え方をお聞かせください。

加藤貴博:
弊社が最も大切にしているのは顧客起点の考え方です。エンジニアであってもバックオフィスであっても、自らのお客様が誰で、その方が困っていることは何かを明確に言えるよう解像度を上げてから業務に取り組むことを重視しています。

この考え方を形にしたのが「Don! Baang! Gyuuu!」という弊社のバリューです。「Don!」は大胆な挑戦をしようという意味、「Baang!」は当事者意識を持とうという意味、そして「Gyuuu!」には成果にこだわり抜くという意味を込めています。

社員数が少ない組織だからこそ、それぞれが何のために仕事を行うのかを理解し、自ら行動できる環境づくりに注力しています。

ーー今後の展望について教えてください。

加藤貴博:
「ジモティースポット」をさらに広く展開していくつもりです。人口5万人以上の自治体を対象に、最低でも300箇所を5年以内に開設したいと考えています。その際に特に重要となるのは、地域ごとに特徴があることを理解し、地元で熱い思いを持つパートナー企業とともに成長していくことです。

愛知県や山口県で実施しているFC展開のように、地元の企業と一緒に「ジモティースポット」を運営することで、より地域に密着したサービスを提供できるでしょう。そうした取り組みを経て、2030年には「社会的なインフラをみんなでつくれたね」と喜び合える企業になれたら嬉しいですね。その実現に向けて、これからも一歩ずつ歩みを進めていきます。

編集後記

加藤社長が語る言葉からは、地域への思いの深さが伝わってきた。リクルート時代の小さな教室との出会いから生まれた問題意識が、今や日本全国の自治体と連携するサービスへと進化している。地域に深く根を張りながら社会的価値の創出に挑むその姿勢に、地域創生の希望を見た。

加藤貴博/早稲田大学政治経済学部卒業後、2001年に株式会社リクルートへ入社。広告営業、メディアプロデューサー、編集長、新規事業開発責任者を歴任。2011年にジモティーの経営を引き継ぎ、代表取締役に就任。